75回目の広島原爆忌…
8月6日、広島は75回目の原爆忌を迎えた。
広島市中区の平和記念公園では午前8時から平和記念式典(原爆死没者慰霊式・平和祈念式)が開かれ、約800人が犠牲者を悼んだ。新型コロナウイルスの影響で例年約5万人に上る参列者は大幅に制限された。
松井一実・広島市長は平和宣言で、核兵器だけでなく新型コロナウイルスを「人類の脅威」と位置づけ、「自国第一主義によることなく、連帯して脅威に立ち向かわなければならない」と訴えた。
今年は感染防止のため、午前5〜9時の会場への入場を招待者のみに規制する異例の式典となった。例年約1万1000人に上る招待者らは被爆者団体などを通じて絞り込んだほか、一般参列者の座席を設けず、椅子の間隔も2メートル空けた。
式典には、被爆者や各都道府県の遺族代表のほか、安倍首相や、核兵器保有国の米露などを含む海外83か国と欧州連合(EU)代表部の駐日大使らが出席。遺族代表は23都道府県の23人で過去最少だった。
原爆が投下された午前8時15分には遺族代表が「平和の鐘」をつき、全員で1分間の黙とうをささげた。
宣言で松井市長は「『75年間は草木も生えぬ』と言われた広島は今、復興を遂げて平和を象徴する都市になった」と強調。その上で国連難民高等弁務官として難民支援に取り組み、昨年92歳で亡くなった緒方貞子氏の「自分の国だけの平和はありえない。世界はつながっているのだから」という言葉を引用し、惨禍を繰り返さないために国際社会の結束が必要と訴えた。
また、原爆投下直後に降った「黒い雨」を巡り、国が定める援護対象区域外の住民を被爆者と認定した7月の広島地裁判決を踏まえ、「『黒い雨』の降雨地域拡大への政治判断を改めて強く求める」として、国の支援拡充を促した。
核兵器禁止条約については「被爆者の思いを誠実に受け止め、唯一の戦争被爆国として、世界中がヒロシマの心に共感し、連帯するよう訴えてほしい」と条約の署名・批准に否定的な政府に方針転換を迫った。
安倍首相はあいさつで、「立場の異なる国々の橋渡しに努め、各国の対話や行動を粘り強く促すことによって核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の取り組みをリードする」と述べた。
原爆死没者慰霊碑には、この1年間で死亡が確認された被爆者4943人の名前を書き加えた名簿が奉納され、死没者は32万4129人となった。全国の被爆者(被爆者健康手帳所持者)は3月末現在で13万6682人となり、前年同期から9162人減った。平均年齢は83・31歳で、前年より0・66歳上がった。
<読売新聞オンライン
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